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春の妖精

 3月15日の冬の野鳥観察会。

 いつもご参加くださるボランティアさんから、うれしい知らせをいただきました。

「甘菜(アマナ)、咲いたわよ」

 その一言に背中を押され、さっそく様子を見に向かいました。

 甘菜という花

 甘菜は、早春に白い星形の花をひとつ咲かせる多年草で、日当たりのよい草地などに自生します。

 晴れた日の日中に花を開き、曇りや雨、夕方には閉じてしまう性質があり、春の短い期間だけ姿を見せる「スプリング・エフェメラル(春の妖精)」のひとつです。

 曇りと雨のあいだで

 最初に訪れた日は曇り空。

 甘菜はそこに確かにありながら、花は固く閉じたままでした。

 そして翌朝――今度は雨。

 しとしとと濡れる中でも、やはりその花は開かず、静かに時を待っているようでした。

 それでも、しばらくすると雨は上がり、気温がゆっくりと上がってきます。

 すると、ほんのわずかに花びらがゆるみ、半分ほど開きかけました。

 半分だけの春

 大きく開くことはありませんでしたが、

 その控えめな姿は、かえって春の気配を静かに伝えてくれます。

 晴天のもとで見せる華やかさとは違う、

 曇り空の下でしか出会えない、やわらかな表情。

 今日はここまで。

 “半分だけの春”を胸に刻み、その場を後にしました。

 自然は、思い通りにはいきません。

 だからこそ、その一瞬はより深く心に残ります。

 次こそは、青空の下で。

 甘菜が大きく開く、その瞬間に出会えることを願って。