――天王森泉公園・百人一首の会――
「秋の田の かりほの庵の 苫をあらみ わが衣手は 露にぬれつつ」 ――天智天皇
令和八年正月十一日。
今年一番の寒気が訪れると聞こえし朝、天王森泉公園には凛と張りつめた空気が満ちておりました。まるで千年前の都の朝を思わせる趣きです。
その泉館の二階にて開かれたのが、寒さを忘れさせるほど心温まる「百人一首の会」。
むらさめ会・東さんの導きにより、昨年に続いて執り行われた、いにしえの雅を今に伝える集いでございます。
「春過ぎて 夏来にけらし 白妙の 衣ほすてふ 天の香具山」――持統天皇
この日集いしは、小学生・中学生とその家族あわせて二十五名、東さんご夫婦、さらに横浜ケーブルテレビの方々も加わり、総勢二十九名。
年若き童(わらべ)から大人まで、世代を越えて同じ歌に耳を澄ませる光景は、まさに王朝絵巻の一場面のようでした。
札は広げられ、「バラ取り」「源平合戦」といった勝負の作法が告げられると、場の空気は一変。
和やかさの奥に、真剣勝負の緊張が走ります。
「ちはやぶる 神代もきかず 竜田川 からくれなゐに 水くくるとは」――在原業平朝臣
東さんの読み上げの声は、澄んだ冬空に力強く響き渡り、その一音一音に参加者は息をひそめます。
札を狙う鋭い眼差し、読みを待つ静寂、そして一瞬の動き――
札を払う音が鳴るたび、時代を超えて歌が生き返るかのようでした。
勝敗が決した後に浮かぶ晴れやかな笑顔は、まるで春の訪れを先取りしたかのよう。
周囲で見守る人々もまた、手に汗握りながら、その一瞬一瞬を共に楽しんでおられました。
「めぐりあひて 見しやそれとも わかぬ間に 雲がくれにし 夜半の月かな」――紫式部
澄みきった冬空のもとで繰り広げられた百人一首の会は、ほんのひととき、現代を離れ、歌の都へと心を運ぶ時間であったように思います。
このような日本の伝統行事が、世代を越え、また次の世へと受け継がれてゆくことを、切に願わずにはいられません。
寒さ厳しき折ではございますが、どうぞ皆さま、御身大切にお過ごしください。
歌とともに、心あたたまる冬の日の記憶として――。













