
今朝の泉館は、しとしとと降る秋雨に包まれていました。
裏庭に廻ると、アカシデの根元にドクダミや岩ヒバが寄り添い、その葉一枚一枚が雨粒をまとって、まるで銀の粉を散らしたようにきらめいています。
日陰では、ヒカゲノカズラやソテツが静かに息づき、薄靄のような雨の景色の中で、ひっそりとその緑を深めていました。
濡れたモッコクの幹は黒く光り、まるで時間そのものがゆっくりと流れているかのよう。
竹手すりの向こうには、トクサが整然と並び、台湾ホトトギスの花が雨の雫を受けてしっとりと揺れ、その合間からは、ナンテンの葉が少しずつ紅を帯びて姿をのぞかせます。
ふと見上げれば、小滝の上にまだ色付いていないイロハカエデが雨に濡れています。
今日は雨のため、来館者の姿もなく、泉館は静寂に包まれています。けれどこの静けさの中にこそ、秋の息づかいと自然の美しさが満ちているように感じます。
耳を澄ませば、軒を打つ雨音が、裏庭の命たちのささやきを運んでくるようでした。