
夜半から降り続いた雨は、朝を迎えてもなお、しとしとと地を叩いています。
気温は17、8度ほど。肌を刺すような冷たさの中に、秋の深まりを感じながら傘を手に出勤しました。
道すがら、背高泡立草が勢いよく咲き誇り、黄金の房を風に揺らしていました。
雨に濡れたすすきと寄り添うように、その黄色は曇天の下でもひときわ明るく、まるで秋を名残惜しむ灯火のようでした。
職場に着くと、ふと心がワサビ田へと向かいます
雨の滴る木の階段を下りると、両脇にはイヌセンボンタケがびっしりと息づき、静かな森の中に柔らかな傘の群れを作っていました。
その先に広がるワサビ田では、クレソンが流れに身を揺らし、ワサビの葉が根元から立ち上がって、冷たい湧き水を受けて、どの葉もみずみずしく、凛とした気配をまとっていました。
ワサビ田の出口付近では、雪の下がひっそりと葉を重ね、雨のしずくをひとつひとつ抱えていました。
その間を縫うように、夏の名残――忘れな草が葉だけになって輝いています。
淡い光の中で、流れに身を任せるその姿は、まるで時の狭間を漂う小さな夢のようでした。
静けさの中に、命の気配が満ちています。
10月のワサビ田は、雨に煙りながら、やさしく季節を受け入れていました。