
~秋の天王森泉館で音楽のひととき~
10月12日、秋の深まりを感じる心地よい風が吹く中、天王森泉公園の古民家・泉館では、秋の音楽ライブが開催されました。築百年以上の歴史を持つ木造建築の泉館は、しっとりとした秋の光に包まれ、木の香りが漂う穏やかな空間。そこに響き渡ったのは、津軽三味線の力強くも繊細な音色でした。
今回出演されたのは、津軽三味線奏者の中原正人さんと川崎愛実さん。早稲田大学出身のお二人が、天王森の静けさと自然の息づかいに溶け込むような音色を響かせ、訪れた約50名以上の観客を魅了しました。
演奏プログラムは二部構成。
第1部では、「津軽じょんがら節」「あまのじゃく」「蟒蛇(うわばみ)」など津軽三味線の伝統曲と現代曲が織り交ぜられ、力強い撥の音と繊細な旋律が交錯しました。特に「月の沙漠」では、三味線の響きが砂漠の風を思わせるように柔らかく流れ、古民家の梁や障子に反射して幻想的な雰囲気を生み出しました。続く「da capo」「Celtic Steps」では、洋の要素を取り入れたアレンジが披露され、三味線の新たな可能性を感じさせる演奏となりました。
第2部はよりダイナミックな構成で、「輪」「津軽よされ節」「Remain」「NAZCA」など、幻想的で情熱的なリズミカルな楽曲が続きました。後半の「Under the Sea」「Escualo」では、ディズニーやラテンのリズムを取り入れた軽快なテンポが印象的で、観客の手拍子が自然と広がりました。最後の「無窮」では、重厚で奥深い音色が会場全体を包み込み、まさに津軽三味線の真髄を感じさせる締めくくりとなりました。
そしてアンコールでは、会場全員が笑顔で迎える中、「上を向いて歩こう」の演奏が始まりました。三味線のあたたかい音色に合わせ、観客も自然と口ずさみ、会場は一体感に包まれました。天井の梁に反響する歌声と三味線の響きが溶け合い、まるで秋空の下に広がるひとつの大きな調べのようでした。
演奏を終えた後も、来場者の間には「心が癒された」「音が胸に響いた」といった感想が多く聞かれ、拍手がいつまでも鳴り止みませんでした。
古民家の趣と津軽三味線の響きが見事に調和した今回のライブは、まさに「秋の泉館」なら ではの特別なひととき。自然と音楽、そして人の心が織りなすあたたかい時間が流れ、参加したすべての人に深い感動を残しました。
来年の古民家ライブが、またどんな音楽の風景を見せてくれるのか——今から待ち遠しく感じます。