
五月の午後、くわくわ森を歩いていると、思わず足を止めてしまいました。湘南台の方向に目を向けると、森の中段に広がる地平線の上に、まるで白い絨毯がたなびいているかのような景色が広がっていたのです。
それは、ミズキの花でした。
ミズキは五月になると、枝先に小さな白い花を密に咲かせます。その姿は、まるで綿のような端がふわりと宙に浮かび、クリスマスツリーのように幻想的に積もっているかのよう。遠目から見ると、それが一面に広がる白のベールとなり、森の深みと調和して息を呑む美しさを見せてくれます。
「水木」と書くこの木の名は、その幹を切ると大量の水がにじみ出ることから名づけられたと言われています。水をたっぷり蓄え、まるで命の源のようなその姿には、静かなる力強さが宿っているようにも思えました。
くわくわ森の歩道を歩くと、風が運ぶミズキのほのかな香りと共に、季節の移ろいを肌で感じることができます。春から夏へと向かうこの季節、ぜひ一度、白い花が森を染める瞬間を見に訪れてみてください。